堺総合法律事務所

 

事件ファイル


「STOPカジノ!住民訴訟~カジノはまだ止められる」

弁護士 辰巳創史

  大阪府・大阪市は,2023年9月28日 ,政府から認定を受けた 「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」につき,IR事業者との間で,大阪カジノを整備する実施協定や定期借地権設定契約等を締結しました。

 大阪IRについて,大阪市の松井一郎市長(当時)は,「IR,カジノには一切税金を使いません」と公言していたにもかかわらず,カジノ事業者の要求に応じて約790億円もの公金投入を決定しています。この点については,支出の差止めを求める住民訴訟が提起され,大阪地方裁判所で争われています。

 また,大阪市は,IR事業者に対して夢洲の市有地を,35年間の長期の固定で月額428円/㎡という著しく安価な賃料で貸すことを予定しています。賃料を設定するにあたっては,不動産鑑定業者による鑑定が2度にわたって行われていますが,1度目の鑑定では4社中3社の,2度目の鑑定でも3社中2社の評価額が完全に一致するという不自然な結果が出ています。また,莫大な利益を生み出すIRとしての事業用地であるにもかかわらず,鑑定にあたっては「IRを考慮外」として低層の大型ショッピングモール見合いの土地として評価するなど,不当に低額となる鑑定がなされています。さらには,2度にわたって鑑定を行った鑑定業者のうち2社が,同じ取引事例を選定し,両社とも実際には(土地+建物)の取引事例であるにもかかわらず,(土地)だけの取引として評価するというあり得ない「同じ誤り」を犯していることが発覚しました。ここに至って,「鑑定談合」が行われたのではないか,しかも大阪市が事前に示した賃料に沿うように「官製の鑑定談合」が行われたのではないかという疑惑はますます深まっています。

 この賃料が不当に低額であるという問題についても,住民訴訟が提起され,先行の住民訴訟に共同訴訟参加する形で大阪地方裁判所で争われています。私も,この住民訴訟に弁護団の一員として参加しております。

 カジノは,ギャンブル依存症の拡大,多重債務問題などを生むだけでなく,青天井の公金支出による費用負担,著しく低額の賃料による損失など将来にわたって大阪府民・市民に「負の遺産」を遺すことになります。諦めず,カジノ阻止のために力を尽くしたいと思います。

 


 
 
 
105106   | 目次 |